紺野道昭通信

Ⅰ.経営者の“判断軸”に踏み込む② 成功体験に縛られない理由(定期発信-Vol.241)

ある時、経営者が集まる場で、バブルの頃が話題になりました。

毎晩飲んで、毎週ゴルフだったなど彼らの思い出話を聞きながら、私は苦笑いしていました。

そのころそんな余裕などなかったからです。

正直に言えば、当時はみんなが羨ましかったです。

でもうちは赤字の上に私は会社の保証人にもなっていました。

逃げるに逃げられず、まして遊ぶ余裕などありません。

とにかくどう存続させるかだけを考えていました。

 

経営者としての私は、過去の成功体験に縛られることはありません。

そもそも私は成功体験を殆ど覚えていません。

時系列でアーカイブしているわけではありませんから、自分でも驚くほど覚えていません。

だからこそ、逆に過去の型にしがみつきにくいのかもしれません。

 

ただ、はっきり言えることがあります。

それは、「目の前のことをしっかり行う」ということです。

私はよく、社員にアリとキリギリスの話をします。

過去もこれからも当社の社員はアリです。

キリギリスのように、その時その時を華やかに踊るのではなく、せっせと運び、備え、積み上げる。

否、踊っている余裕がなかっただけかもしれません。

でも、結果としてそれでよかったと思います。

キリギリスをたくさん見てきました。

景気のいい時は華やかだったのに、その後苦しくなって会社をたたんだり、人が離れたり、信用を失ったりする事例を嫌というほど見ました。

そういう姿を見てきたからこそ、「自分はあのようになるまい」と思ったのです。

 

今は、昔よりは少し余裕があるかもしれませんが、踊ろうとは思いません。

若い頃に踊れなかった経験があるからです。

あの時の苦しさを知っているからこそ、地に足をつけることの大切さがわかるのです。

成功という言葉には、どこか派手さを感じます。

しかし私は、経営の本質は派手さより継続にあると思っています。

派手な花火を上げるより、正しいことを長く続ける方が難しいし、価値があります。

このように考えるのは、私自身がそうせざるを得ない環境の中で歩んできた結果です。

成功体験に縛られないために特別な工夫をしているわけではありません。

過去を自慢の材料にせず、「今日しっかり出来ているか」を大切にしているだけです。

昨日うまくいっても、明日またうまくいくとは限らない。

だからこそ、毎日を新しい一日として見るのです。

 

経営者の判断軸というのは、結局はその人の姿勢に現れます。

 

目の前のことをごまかさない。

踊らず浮かれず地道に続ける。

 

これらの積み重ねが、会社を守ってくれるのです。